戦略とは

頂きに立つためのもの

1567年11月頃、織田信長は『天下布武』の印章を使うようになり、内外に何を目指すのか示しました。
当時、信長の所領は尾張・美濃の2ヵ国だけで、他の有力大名(武田信玄や上杉謙信、三好三人衆など)と比べて、格別な地位を築いていたわけではありません。 にも関わらず、それから15年後、1582年に本能寺の変で亡くなる頃には、信長は天下の中心部を手中に収め、ほとんど天下人と言ってもいいポジションにまで登りつめました。
『天下に武を布く(しく』、そう宣言し、その旗印に向かって信長とその家臣たちは動いたのですが、ただ漫然と成り行きにまかせて動いていたのでは、あそこまで勢力を広げることはできなかったでしょう。
優秀だと思ったら過去を気にせず重用し、司令官として各方面に配置したのも、足利義昭をしばらく将軍に据えていたのも、キリスト教に緩和的だったのも、すべては『天下布武』実現のため。
『天下布武』という山に、いつまでに、どこから、どうやって登るのか。
「戦略」とは、登ると決めた山の頂上に立つために、どのように行動していけばいいか、「打ち手」を定めるものです。

戦略策定の流れ

戦略策定の流れ

(1)どの山に登るのか = 基本理念策定

基本理念とは、言い換えれば組織や個人がどの山を登るのか定めるものです。
信長の場合は『天下布武』という山を登ると決めました。
『天下布武』(基本理念)は信長が戦国大名として行動する上での拠り所となるものです。基本理念は長い目で見てぶれることのない価値観であり、進む方角を指し示すものになります。実際、信長の進路を見てみると、『天下布武』の重大な足掛かりとなる京に向かって、尾張から美濃、そして近江、畿内とまっすぐに進んでいます。
明智光秀は本能寺の変を起こし、一時的に天下人の最も近くにいましたが、味方してくれる武将・大名も少なく、あっという間に敗退してしまいました。これは光秀の行動のベースに、いろんな人と共有・共感される基本理念が欠けていたからとも言えるのではないでしょうか。

< ファーストリテイリング(ユニクロ)の場合 >

服を変え、常識を変え、世界を変えていく ファーストリテイリングの企業理念はFR WAYと言って、「ステートメント」「ミッション」「バリュー」「プリンシプル」の4つから成っています(FAST RETAILING WAY(FRグループ企業理念))。そのうちの「ステートメント」に記載されているのが、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」という言葉で、企業理念の中でも基本理念と言っていいものだと思います。
FR WAYについて『成功は一日で捨て去れ(柳井 正著)』で柳井 正氏は次のように述べています。

事業というのは、1つの考え方に基づき集まった人々が、それを実現するために仕事をしていく(行動を起こす)、という点で宗教に似ていると思う。逆に、行動の基準となる考え方や価値観がないと、人々が有機的に集まって1つのことを成すためのチームワークはとれない。全員バラバラの方向を向いて仕事をしていたら、大きな力は発揮できない。FR WAYは、同じ方向を向いて全員で血の通った経営をしていくための、心のよりどころのようなものだと考えればわかりやすいのではないか。

特に組織が急成長した場合など、成長の過程で多くの人材の出入りがあるでしょうから、こうした理念を共有できていないと、何かの拍子に烏合の衆と化してしまいかねません。
『コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略(ハメル&プラハラード著)』でも旗印を定める必要性を説いています。

社内のある者は左に行って、ある者は右に行っていたら、会社全体としてはにっちもさっちもいかなくなる

企業だけでなく、戦国大名であろうと、サッカーチームであろうと、オシム前日本代表監督が『考えて走るサッカー』を目指したように、『基本理念』または『在り方』を示す概念がわかり易い言葉として共有できていた方がその集団は成長するでしょうし、危機に面したとき、一枚岩となれるでしょう。
日本企業が高度経済成長を続けていたときは、明確な『基本理念』がなくても、会社が順調に成長すれば、社員の便益も増えたので、まとまりを保てたのかもしれませんが、右肩上がりの社会ではなくなった今では、これまで以上に『基本理念』の共有は大切になってくると思います。

< 基本理念 事例 >

社名 基本理念
スタートトゥデイ 企業理念『世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。』
経営理念『いい人をつくる』
クックパッド 企業理念『毎日の料理を楽しみにすることで心からの笑顔を増やす』
面白法人カヤック 経営理念『つくる人を増やす』
ソフトバンク 経営理念『デジタル情報革命を通じて、人々が知恵と知識を共有することを推進し、企業価値の最大化を実現するとともに人類と社会に貢献する』
BEAMS 企業理念『"BIG MINOR SPIRIT" "GLOBAL EYE" "LIFE STYLE CREATOR"』
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< 参考文献 >

最終更新:2010年03月13日
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